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五家の庄と玉虫(10・扇の糸)

2014/05/06
五家の庄と玉虫(扇の糸)

(フィクション)
 

                                                室長            

その頃、清経は長男盛行・次男の近盛、猟師の又八を連れ山から山、谷からまた谷へと、自分達が住み着いた近隣の地形を調べた。



久連子川を下り、川辺川を遡り、更に小金峰を超え、道無き道を下ること三里。
清経は息も絶え絶えの中、木々の合間に見えた茅葺き屋根の家らしき物を見て、げーーと息を呑んだ。

IMG_0423_20140506095955937.jpg


「おい 近盛 近盛   あれは あれは家ではないか

「わしら以外に人が 人が住んでおる」清経は愕然とした。
清経達がびっくり仰天したのも無理は無い、豊後の国を出て数え切れない程の山を越え、谷を超え、はるばる人の住まぬ

と思ったそのまた奥に家があるのである。
清経と盛行はへなへなと山肌に座り込んだ。

何で、何で何で何で、どしてどしてどして、どうしてこんなとこに家が在るんや

又八は、二人の余りの落胆の表情に声をかけるのもはばかられ、しばらく押し黙ったまま下の家を見つめていた。
気持ちを落ち着かせたのか清経が

「又八 、お主ちと様子を見て来てくれぬか、お主なら怪しまれまい」
「わかったきーー」

又八いつもの飄々とした顔で返事すると、山肌をスススーーと下りて行った。
川沿いに建っているその屋敷は、以外や以外立派な建物であった。

頭を薄い布でくくった、12・3 の娘がムシロに干した豆を叩きながら皮を剥がしていた。
中に人の気配はするものの、特別に危険な気配はなかった。


菅原家



又八はすぐ清経のとこへ戻ると屋敷の様子を伝えた。
清経は盛行に「お主はこの近くに待て」と言い残し又八を連れ屋敷に近づいた。

清経は娘の背後から「御免下され」と声をかけた、娘はビックリした顔で声も出さず首を回し見つめ返した。
「わし等はあやしいもんでは無い、主にお会いしたい 取り次いでもらえまいか」とできるだけやさしく話した。

娘はわかったと見え「少しまっとくれ・」

と言いながら家の奥へと消えた、しばらく待つと、「こっち入りやんせ」と中へ案内した。
入口から中へ入ると、しばらく目が見えず゛中がどうなっているかさえ判らなかった。

「どうぞ、どうぞ、こちらえ」
中の暗闇に目が慣れると、そこには古希を過ぎたであろう爺様が、一人囲炉裏の側に座りこちらを見ていた。

「こんな山中にまた珍しい、どこからこらしたかなー」
と悪意の無い表情で問いかけた。

「手前、事情あって人里離れた処を探し、この山の向こうに居を構えもうしました、近くを探索するうち、こちらに出てしまいました」
「ここはいったい何と言うとこでござろうか

老人はけげんな顔で暫く清経の顔を見ていたが「そうよのー何も土地の名前もなかけん、わからんのー、こか、わし等一族だけのとこで、何十年いや何百年になるかなーー」

「・・・近くにまだ民家がありましょうか
「いやいや、この辺に家はわしの一族がもう一軒あるだけやが」「わしらが知るだけで里の向こうは知るまい」

清経は世間に何百年も知られず、一族のみの生活と聞き、ほっと胸を撫で下ろした。
そうであれば事情を話し、近くに住む許しを得た方が何かとお互いの為になるであろう・・と考えた。

「手前ども、これより追っ手を逃れて隠遁生活を余儀なくされており申す、もし不都合無ければ、長くこの山中での生活される事情話しては下さらぬか

しばらく押し黙ったままの老人、清経の顔をながながとみつめた後「そおよのーーもう11代も昔の言い伝えでノーー」
と一息つくとぽつりぽつりと話し始めた。


「わし等の祖先は菅原の道真公での、藤原家の追ってを逃れてここまで落ち延び今日に至っておる、もう都の話などもトント知らぬが、そうでござったか・・・」

「聞けばわし等と同じ運命よのーー」とすすけた天井を見ながら考えにふけた。
清経も聞くほどに、あまりにも似た自らの運命に、強烈な親近感を覚えた。

その夜、勧められるままに一行はこの家の客となり、世の更けるのも忘れ、280年を遡る老人の語りに耳を傾けた。

一方、人の住むはずもない処で切り株を見つけた那須野小太郎、
「者ども近くに人が居るはず探せーー」

「大将人影が」と郎党の一人がくわを振るう玉虫と弟の久茂を見つけ小声でささやく、
よーしと小太郎は急峻な竹藪を駆け下りて行く

っと、その時先頭を行く小太郎の足に激痛が走る「ギャーー」と言う小太郎の悲鳴に後ろを下る配下の者もいざ何事、と左右を見回す。

しかし周りに人影は無かった。
「どうなされました小太郎様・・」

と聞くが小太郎は苦痛に顔を歪め、ただうめくのみであった。 
小太郎の足は竹の切り株をつらぬき、身動きさえもできぬ有様、郎党達はなす術も無く、わめき叫ぶ小太郎の足をいやむ

りに竹かぶから引き外した。
玉虫と久茂は「今の悲鳴は何事・・」と身構え、竹藪から出てきた数名の武士を見るや「あ

っ・・」と声にならない声を出した。
それは一番恐れていた源氏の追討の者達に他ならなかった。

玉虫達の畑に駆け下りてくるや、「そこな娘御、怪我で困っておる、何か薬草と布をもらえまいか?」
と必死の様相で一人の武士を抱え下した。

玉虫と久茂は目を見合わせるが声も出ず。
苦痛に歪める怪我人を見た、頼まれればこれは自然の成り行き、とっさに「こちらへ・・」と狭い小屋の板の間に案内し

た。
何の因果か糸車、否応も無く、この夜から玉虫は那須の小太郎の看病に付き合わされることとなるのであります。

竹の切り株を踏み抜いた足は、発熱を伴い化膿し始めた、小太郎は痛みと熱にうなされ続けた。
玉虫は狭い小屋の中で唸る小太郎を見捨てる訳にもいかず、よもぎを絞っては傷口に垂らし、額にのせた水布を替え続け

た。
看病の中、玉虫の心中は複雑であった、「我らを追ってここまで、このまま捨て置いてよいものを、清経様に後でどの様

なおしかりを受けるや・・」

「それにしても何と敵ながらきれいなお顔立ち・・・
玉虫ちゃんとて人の子年の頃、何も感じない木偶ではありません「ああ困った 困った・・」と思いながら日一日と過ぎて行きました。

七日目の朝ようようにして熱も下がり始め、小太郎はうつつの中、白い顔の娘を見た。

「誰であろうか、自分は何処にいるのであろうか、やはりこれは夢の中   いや違う ・・いや夢、いや何だこの痛み・・これはおれの手・・・それにしてもこの美しい娘御は誰であろうか・・できることならもうこのままで良い、山中の
放浪もくたびれ果てた・・」


「ああ お目覚めになりましたか
「おお ここは何処であろう、そなたは  ああ  わしを助けてくれたのか・・」

「あなた様はどちらからドスエ  お名前は」と問う玉虫に
「おおこれは失礼た、わしは源氏の那須野与一が一子、小太郎と申す・・・・」

と聞くや玉虫「げーーーゲゲゲ   あの・あの・あの・・・弓の あわわわぁぁ・・」


那須





「どうなされた、娘御、そなた言葉が御不自由か
 バーカ びっくりし過ぎて声が出ませんのですがな・・・ 

どこでどうつながったものか因縁の恐ろしさ、それはまぎれもなく屋島の浜でわが扇を射落とした、那須野与一が一子でありました。

当の玉虫さえ、何ゆえこの扇子を壁に飾ったものか、 それはただ一つ玉虫が都を偲ぶ忘れ形見でありました。

小太郎の目はついつい その小屋に不釣合いな扇へと 

扇



ムム・ムム 見事な扇 ・・・・ひょっとして平家の・・・

この山中にこのような扇を持つ者がいるはずもなく、小太郎は既にこの娘が平家の落人のであることを悟りました。
田舎の娘の姿はしていても、言葉のはしばしに出る都言葉のアクセントは隠しようもありません。

小太郎に同行した郎党達も動くに動けす゛、日々を無為に過ごす羽目になりました。
小太郎は家来の一人を呼ぶと「お前たちは大八様の元へ戻り、こちらにはそれらしき落人がいないと報告せよ、わしは怪

我が治り次第帰る」  何と家来たちを帰してしまいました。
弟の久茂も多少の不安あるものの、その屋の空気を感じたものか、小太郎の家来たちが戻ると、清経の処に行ったまま戻

りませんでした。

二人の成り行きは伝説のごとく、この柿迫で幸せに暮らしました。

IMG_0398_20140506095957ed6.jpg
(この建物は五家の庄資料館)

この玉虫ちゃん、余程健康な女性であったものか、乳の出が良く、子供もぼろぼろ生まれました。

この地方では、今もって乳の神様として祀られ、乳の出ない女性がここに参ると、乳が出ると信じられています。

宮崎椎葉の叔父さんは可哀そうにも、命により椎葉から鎌倉へと戻されましたが、一説にはまた椎葉の鶴富姫の処に舞い戻ったとあります。

この地方に那須姓が多いのは、大八さんや小太郎さん達が住み着いたからでしょうか。
その後200年近く、この五家の庄は日本史から消え去り、塩売り甚兵衛の証言で世に姿を現すこととなりました。
                                             



永い拝読ありがとうございました。

                                              完
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