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五家の庄と玉虫(その8・追討)

2014/03/15
五家の庄と玉虫(その八・追討)
                               


                                               (室長)


平家の反撃を極度に恐れた朝廷と、我とわが身の経験をして、平氏復活を恐れた鎌倉は、北に南にさらなる追討の軍を差し向けた。

柿の実もうれる十月の初め、那須の大八と与一の子小太郎は、ようよう赤間が関に辿り着く。
潮が渦巻くこの海峡で、赤と白の旗をなびかせ、幾百艘もの舟がぶつかり合い戦った様が、今は嘘のように静かであっ

た。
布刈が見える海岸に馬を止めた大八

「ここを渡るには地元の漁師に頼む他なかっぺーー」と栃木弁でつぶやいた。

一行は日和山のすそに立つ光明寺に一夜の宿を頼みわらじをぬぐ。
大八は舟のことを光明寺の住職に聞いた。

「誰ぞ対岸まで渡してくれる船の持ち主はおるまいかのーー?}
住職の真影は「あれ以来、この近くでは漁をするものがいなくなりましてのーー」と困った顔をした。

「あれ以来とは?」
「壇ノ浦の戦で御座います」

「何ゆえ?」

「漁に出ると妙な事に、天気も良いのに帰らぬ者が出て、平家の亡霊の仕業と言う噂でしてな、この関で漁をするものがいなくなりました。 舟が有っても怖がって海に出るものが誰もおりませんでなーー」

・・と一緒に困った顔をした。
酒のせいもあり、大八一行は深い眠りに落ちた。

夜半大八は、我が足の冷たさに目を覚ます、「ピチョーー ピチョ 」っとしずくの様な音とともに何かが足に落ちてくる ・・水?外は雨か???いやそうではない。     

揺れる楠の大木の木枝が折れて吹き飛ぶ音、目が覚めたと言うより夢の中のまま。
枕元に立つ数十人の影、「ガチャ・ ガチャ ・・・ ガチャ・ガチャ  」・・甲冑のこすれる音、

「ザー・ザーー」っと誰かが濡れた衣類を引きずり歩く、
大八は「ウーーウーー・ウーー」と声を出すが声にならず、ポタリポタリと額に落ちる水も拭えす゛、体中の毛穴は逆立

ち、首に冷たい汗が流れ落ちる。
胸に薙刀の柄 「ウーー何者ーー」


寺


「大八ーー大八ーー」韻にこもった地の底から湧き出るような声
「帰れ・帰れー帰りおろーー」

「どうなされましたーーー」
横に眠る家来に揺り起こされた大八の顔はまるで死人のように青かった。

ふうーー「あれは平家・平家の・・・」と震える声で言いかけ、また黙り込んだ。
ローソクを点けると、大広間の障子際はなぜか水浸し、大八の足はなぜか濡れていた。


赤間が関の漁師達にはどの様な説得も通じなかった。
大八一行は長府まで戻ると、調達した舟で自ら舟を漕ぎ対岸の布刈を目指した。

豊後から日向へ、重い甲冑を着けた姿での峠超えは困難を極め、郎党二人が北川沿いの絶壁に足をすべらし命を落とした。


三太郎峠



黒岩山中の夜は既に秋風が吹き、野営は常に薄気味の悪く気の強い若武者小太郎も、風の音にさえ振り向いて目をこらした。
「大八様誰かに見られている気配がしますが」

「うむ お主も気が付いていたか・・」
大八はとろとろ燃える焚き火を見ながら小太郎の顔を見た。

角川の浜は見事な松林が続き、それはそれは見事な景色であったが、夜風にうなる松風は一晩中薄気味の悪い音を出し続けた。

夜半に目覚めた大八は、赤旗を掲げる何十艘もの舟が浜辺に近づくのを見る、船上の武者と女官のまわりを青白い鬼火が飛び回った。

亡霊


「大八帰れーかえりおろーー大八ーー」またもや松風とともに聞こえてくる。
夜明け前、家来達のただならぬ声に目を覚ました大八、浜辺に横たわる配下の兵を見て驚愕した。

十数人の兵が水死し、波打ち際に木屑のように打ち上げられていた。
大八は声も無く、夜中の舟は平家の・・・・とまたもや一人出しかけた言葉を飲み込んだ。


噂を頼りに日向の国に着いたのは、木枯らしも吹く十一月の始めの頃であった。
持ってきた食料は遠の昔に食べつくし、追いかける追討の兵は食べるものさえなく、すでに気力さえ失いつつあった。

「大八様、今日はまだ我ら何も口にしておりませぬ、このままでは我らの方が先に倒れてしまいます」
小次郎が皆を代弁するかのように言った。

「そうよのーーどこぞ民家でもあればのー」
「このまま帰れば那須一族は滅亡よのー、都にも那須にも帰れぬーー」

大八はほとほと困り果てたように言った。
当時、日向路には一日歩いても民家らしい民家は見当たらず、食料の調達などあるはずも無かった。

海岸にいる貝を取り、運良く池に泳ぐ雁を捕らえ、飢えを凌ぐのがやっとの一行であった。
「先の民家では、落ち武者らしき一行が大きな川を上るのを見たと聞いたが、この川であろうかのうー」

珍しく見る河口の貧しい集落に着くと、取りあえず当分の食料を求めた。
しかし自らの食料さえままならぬ集落の住民は、素直に提供するはずも無く、「わしらも食う物が無いんじゃー」とけん

もほろろであった。
「こうなれば行けるとこまで行って見るしかない」と大八一行は川に沿って登り始めた。

三日も登ると到底馬など歩ける道は無くなり、川は激流となり人の足でさえ登ることは困難となる。
「大八様これから先は馬は連れて行けませぬ」

「そうよのーこれから先は馬は置いて行くべか」
川を迂回、尾根に出る、「こんなとこ人が住むことは出来ますまい、もう戻った方が良くありませぬか?」小太郎が叔父

の大八に進行の中止を進言する。
腹を空かした追討の武者達も、鬱憤のはけ口に「何か馬鹿馬鹿しいのう、鎌倉の大将も臆病ものよ、わずかな平家の残党

を怖がるとはなー」と口々にぶつくさ言い募る。
尾根の頂上から西を見た小太郎「アッあれに煙」

向こうに人の住む気配が「煙が見えまするぞ・・・」
しかしそれは五つ向こうの山を越えた先の、そのまたむこうに見える一筋の煙であった。


11月ともなると南国日向と言えども、奥日向の山中は既に冬の装いであった。

IMG_0612_20140315141220686.jpg




食料も無く、衰弱した兵を連れ、この雪の山中を進むことが自殺行為と悟った大八は、降り出した雪に「やむを得ぬここ

は引き返す」と意を決した。


那須の大八一行が近づいているとも知らぬ清経や玉虫達は、この冬の食料確保に必死であった。
「ようとれましたなーほらこんな大きなおいもさん」

「ほんまですになーー」
「遊んどらんとハヨせんか 」長男の盛行がすぐ怒鳴った

「ほんまにうるさい人やなーー」
玉虫達はどうやら慣れた畑作業に、生来の明るさを取り戻しておりました。

この冬の寒さが一時の安穏な日々をもたらしたのでございます。



                                          その八 おわり





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