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五家の庄と玉虫(その6)

2014/02/18
五家の庄と玉虫(その6)




緒方の館に着いた玉虫、空腹にもかかわらず食は進まず、用意された布団の中倒れこむように眠ってしまいました。



「ハイ上がり、わての勝ちどすえー・・・」

「やっぱり  玉虫ちゃんさいころ上手やねーー」


月見





「あーー今日のお月さんきれいどすなーー」

そこは檜作りの広縁、五人ほどの女官と公家の息子達との月見の宴
あーー母さま「ハヨ帰りなされや・・」

目まぐるしく移り変わる都の日々・・・



「姉者・姉者 大丈夫かーー  」

大きな声に揺り動かされ目を覚ます、夢かうつつかうつつか夢か、思いをたどりそこが竹田の緒方の館であることに気付くまでややしばしの時間を必要とした。

「あーー今母者と話していたに・・・」半ば戻りたくない現実に嫌々ながらも引き戻された。
玉虫が目覚めたのは翌日も昼過ぎのことである、熱にうなされ、とろとろとした時間は玉虫にとって心地良いものであっ

た。

「大丈夫玉虫ちゃん・・」
心配した鈴虫や芋虫が顔の真上から覗いている。


都育ちの玉虫達にとって、この一月というもの、一生の時間が一度に過ぎていくような経験であり、また肉体的にも過酷な日々であった。

平家の館ではただ詩を読み、菓子を食べ、すごろくに興じ、送り迎えの牛車に揺られ、日々なんの苦労無く、歩くことさえも無い生活は一変。

道無き道、葦の原・ぬかるみの中を這い、山肌を登り、やぶの中を掻き分け、やっとのこと人の住まいに、辿り着いたのでありました。

安心感と肉体の極限を過ぎ、その日以来三日というもの眠っては起き、眠っては起き、夢の中とろとろと、はっきりしない時間を過ごしていきました。

心配した当主影清は玉虫を館の医者に見せた。
一目見るなり「衰弱がひどうござりますな、少し滋養のあるものを与え養生すればすぐ良くなりましょう」

「それにしてもこの傷はひどう御座りますな・・」
と言って、白く細い脚と真っ赤にただれた足の草履跡を見やった。

「このこと口外は無用ぞ」と影清は念を押した。

あれほどひどい衰弱も若さでしょうか、三日後には熱も下がり、今までの不足を取り戻すがごとくの食欲に、まわりの者は呆気にとられました。

影清殿、今後の事でござるが、このままここに逗留するのは迷惑をかけることとなる、どこか人目につかぬとこで暮らしを立てたいと思うが・・・」

いやいや、手前もどうしたものか思案していたところでござる」
清経も影清もいずれ源氏の追っ手はこの竹田に現れるであろう・・・と考えは同じであった。

これより五ヶ瀬の奥に猟師さえ入ったことの無い深山がありまするが、そこなら追っても分かりますまい、ただ人も近寄れぬ処とて足の弱い女御達は難しゅう御座いましょう」

清経も玉虫達女の様子にこれから先のこと、同行すべきか迷いに迷って決断しかねていた。
ただ、平家がこのままこの世から消え去ることは先祖に対して、また叔父清盛にも申し訳ない、源氏も許せず、いずれの

後にか平家再興を考えていた。
とすれば平家子孫を残さねばその夢は消えうせる、「やはりあの者どもは連れていくしかない」

途中の難儀は承知の上と清経は同行を決断した。
「そうでござるか、承知つかまりました、そうと決まれば出立の準備急ぎましょう」

と快く配下の者に支度を指示した。


「真にお世話になり申した」
「どうぞご無事で」

簡単な挨拶の後、梅雨の走りも見える五月も終わりの頃、頑丈そうな猟師二人が加わり一行は朝もやの中を出立した。
頭巾に念珠、錫杖・麻の法衣に手甲脚半・八目の草履、背中は肩箱をそれぞれが背負い、当時はやりの修行の山伏の一団

は緩木川沿いに田植え前の田の中の細い道を進む。
「話しかけられたらわし等が話しますゆえ、黙っておいて下さりませ」

列の前後に加わる猟師は用心の為、地元の百姓と直接話ししないよう注意した。
都生まれの一行が豊後の言葉を話せる訳も無く、話せば即座に地元の人間でないことは分かった。

案の定すれ違う百姓は「こんにちはーだいぶんぬきーなったなーー」と挨拶してきた。
「おーーがんばっちょるなーー」と猟師の二人が豊後言葉で大声で挨拶を交わした。



竹田出発5/28



竹田より楥木川沿いにあぜ道を登ること四里、日も高い頃、村はずれの粗末な小屋に到着。
「今日はこれまでと致します、明日からの準備致しますほどに皆様方は中でお休み下さい」と小屋の中に案内した。

久蔵は四十半ば、生まれつきの猟師で、時々獲物の皮を緒方の館に持参、代わりに米と交換しにくる、必要以外の言葉は滅多なこと喋ることガ無い、も一人の案内人又八もこれまた滅多なことでは喋らないと言う、世間から見れば一風変わっ

た人間に見える。
元来猟師に言葉は不要の仕事、獲物を前にして自らの気配さえ消して対峙しなければ獲物を獲ることは難しい。

緒方の当主影清はこの猟師を変人とは見ず、実直な性格を見込んでの案内役に命じた。

山中での生活に何が一番必要なものか、猟師の久蔵は知り尽くしていた。
久蔵の嫁であろうか、一人の女が夕餉の支度をしながら「塩と野菜の種はこっちおいとるきー」「あれはここ、あれはこ

こ」と久蔵に伝えた。
清経様「そのわらじではこれからの山は歩けませぬ、明日からこれを皆様お履き下されや」

出してきたのは熊の皮で作られた滑り止めのついた靴。供侍のもの、さらには玉虫達女物まであつらえ準備されていた。

「春とはいえ山中の夜は寒う御座います」と一人一人の肩箱にやはり熊の毛皮で作った防寒防雨の蓑を丸め込んだ。

まともに夜露が凌げるこれが最後の夜でありました。
鈴虫「明日からどこへいくんでっしゃろなーー」

玉虫「わてもわかりまへんえ、遠い遠いとこでっしゃろなーー」
二度と帰れぬ、二度と会えぬであろう、父母の居る都を想い、いつの間にか眠りについた。

山道に不慣れな清経一行は、久蔵と又八達に遅れまいとするが、焦る気持ちがさらに足をもつれさせた。
猟師の歩行は正に山のヒヒの如く、するすると山肌に消え、時に見失う。

それでも久蔵達は一行に気遣い、歩行を緩めているらしく、頃合を見ては後ろを振り返った。
越敷岳を超えたところで、日は傾き山木の間を夕日が斜めに照らす。

「今日はここらで一夜を明かしますキー」
久蔵が言うと、又八はすぐまた山中に消えた。

程なく又八は鹿を一頭肩にかついで帰ってきた。
それにしてもいくら猟師といえ、瞬く間に鹿を捕らえ、器用にその獲物を解体、食料を確保する様に清経一行は驚嘆し

た。
塩を付け焼いただけの鹿の肉は、この世にこれほどおいしい食べ物があるのかと思うほどであった。

これはうまいのう
「おいしゅうおすなーーー」

「うまいなーー」「うまいーー」
「うもうごさりますかーー」久蔵は玉虫達を見ながら笑った。


満腹になると、玉虫達を強烈な眠気が襲った。


三日後、国見岳と玄武山の山間を抜け愛宕山の頂きに出ると、東の谷あいに高千穂の里が見えた。
「あれが神話の里高千穂にございます」


高千穂





「あれがのーー」
清経は都で何かの書を見た時、高千穂のことは知っていたが、まさかそこを目にすることなど予想もできなかった。




                                             (竹田出立続く)
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